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史克威尔艾尼克斯10亿日元游戏竞赛专访:斋藤阳介与时田贵司谈发掘新IP决心

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

AI 导读

史克威尔艾尼克斯于2026年5月20日宣布举办总奖金10亿日元的SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026游戏竞赛,以发掘新IP与创作者。竞赛设15个奖项,采取用户与专家三阶段评审,获奖作品由史克威尔艾尼克斯全面协助发行与本地化。

正文

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

 2026年5月20日、スクウェア・エニックスは賞金総額10億円となるゲームコンテスト“SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026”を開催することを発表した。

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 公募によって集められた作品から最優秀賞などの受賞作品15本を選び出し、受賞作品には賞金が贈られる。加えて、ゲームリリースまでのパブリッシングについて、スクウェア・エニックスの全面協力も受けられるというものだ。

 今回は、本コンテストが開催されることになった経緯やその狙い、審査の進めかたなどについて、コンテストの運営に関わる齊藤陽介氏と時田貴司氏に話をうかがった。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

齊藤陽介(サイトウヨウスケ)

スクウェア・エニックス 執行役員。『ドラゴンクエストX オンライン』や『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』、『NieR』シリーズなど、さまざまな人気タイトルを手掛ける。そのほか、バーチャルアイドル“GEMS COMPANY”をプロデュースするなど、活躍の分野は多岐にわたる。(文中は齊藤)

時田貴司(トキタタカシ)

スクウェア・エニックス プロデューサー、ゲームしょくにん。SFC版『ライブ・ア・ライブ』では初めてディレクターを担当。同作のHD-2Dリメイク版や、『半熟英雄』シリーズ、『ナナシ ノ ゲエム』などでプロデューサーを務める。(文中は時田)

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賞金総額10億円・“該当作品なし”にしないのは「スクエニの覚悟」の形

――今回はスクウェア・エニックスさんが主催されるゲームコンテストについて、開催の経緯や狙いなどをうかがっていきたいと思います。本コンテストを発表されて以降、反響はいかがですか? 事前の予想と比べて、いい反応が多かったですか? それともネガティブな声が多かったのでしょうか。

齊藤

 反響の大きさを考えても、反応はよかったと思います。金額がすべてではないですけど、我々の本気度は伝わったように思います。――今回のコンテストを開催された経緯ですが、やはり新しいアイデアが欲しい、というのが大きいのでしょうか。

齊藤

 スクウェア・エニックスとして新しいIPを届けていきたいというのは当然あります。社内でも取り組みを進める中で、もっと何ができるか考えていったときに、旧エニックス時代に行っていたようなコンテストを、現代に合う形で久しぶりにやってみようか、となったんです。

時田

 自分たちで作るアイデアが尽きたのではないか、みたいな声もありましたけど、そういうことではないんですよね。また、我々は大きなIPを提供しないといけないというミッションもありますし。もちろん、『パラノマサイト』シリーズやHD-2D作品などでチャレンジもありますし、いろいろなチャレンジを今後も続けていきます。だけど、真新しいもの、小粒だけどすごいものを生み出していくときって、もっと広く可能性を探っていってもいいんじゃないかと思うんですよね。

 そういう作品やクリエイターを掘り出して世に送り出すという意味で、広くコンテストを開催する意義はあるんじゃないかと。これまでゲームを出してこなかった会社さんもゲームパブリッシングに乗り出してきているなかで、我々としてはどんなアプローチをするべきか、そのあたりも議論を重ねましたね。

齊藤

 最初は正直、「スクエニが金にものを言わせてなんかやろうとしているんじゃないか」みたいな雰囲気があったんですよね。「開発費としてお金を出して、作品に口出しばかりするんじゃないか」とか。でも今回のコンテストはあくまでも入賞作に対して賞金としてお出しするものなので、その誤解はなるべく早く解かないといけないと考えていました。――旧エニックス時代に開催されたのは1982年の“ゲーム・ホビープログラムコンテスト”が最初でしたね。『ドラゴンクエスト』の堀井雄二さんや『風来のシレン』の中村光一さんなど、いまやレジェンドとなっているクリエイターの方々が入選されていました。

齊藤

 その後にもコンテストは開催されて、私が覚えているものだと、全世界を対象にゲームを募集して、チリの方が受賞されたんですよ。

時田

 地球の反対側じゃないですか。

齊藤

 優勝を伝えに行くのもひと苦労だったんですけど、当時は現地の新聞にも載って、街でも話題になっていたらしいです。そこから考えるとコンテストを開催するのは本当に久しぶりなんですけど、また何か新しいイノベーションが生まれることに期待しています。

 あとは、「賞金額で注目を集めて、けっきょく該当作品なしか」と言われるのも嫌だったので、枠として用意した15の賞に対してちゃんと作品を選出します、というのは最初に宣言しています。そこは私たちの覚悟ですね。これでもし受賞作が13本しかなかったら、応募数が13本しかなかったんだと思ってください(笑)。きっちりと15作品、選考させていただきます。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

――総額10億円という金額からも本気度を感じますが、いい作品を集めるにはそれだけのお金が必要である、との考えもあるのでしょうか。

齊藤

 そうですね。今回はクリエイターの発掘であって、リクルートが目的ではないので、「商品として出すんだ」という覚悟を持って臨んでもらいたいんです。それを意志として伝えるために、今回の金額を決めました。

時田

 それぞれの賞金もそうですし、賞の数も多くしていますよね。金額については、最初は「そこまで?」みたいな雰囲気もあったんですけど、しっかりと議論しました。なかなかにホットな数ヵ月を過ごしましたね(笑)。

 あと、どんなプロジェクトでも、QA(品質保証)やローカライズをするとなると、思った以上にお金がかかるんですよ。これはインディーゲームでも同じなんですよね。なのでこの金額でたくさんの作品を世に出せるのだから、決して悪い話ではないんじゃないかなと思っています。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

――賞金はあくまで開発者たちに贈られるものであって、開発費として上乗せするようなものではないんですよね。

齊藤

 そうですね。今回はあくまで、受賞したことに対する賞金です。いわゆる、お金を出すから口も出す、みたいなことではありません。受賞後に作品を商品として仕上げる部分に関して、こちらからアイデアを出すことはあっても、それを採用するかしないかを決めるのはクリエイターの皆さんです。当然、皆さん未完成のものを出すためにがんばっているわけではないと思うので、しっかりと完成させてもらって、ゲームが完成したら2人3脚で世の中に出していきましょうというのが本コンテストの目的です。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

――選考作品15本に対して、どれぐらい応募がありそうですか?

齊藤

 これはもう「来てくれ!」という望みでしかないですね(笑)。

時田

 正直、どれくらい応募が来るかも想像がつかないんですよ。ただ今回は金額が金額なので、相当数は来るんじゃないか、みたいな分析もあります。たくさんの応募数になると審査もたいへんなので、そのあたりも含めてシステム的にどうするかの構築を考えているところです。

齊藤

 こればっかりは、やってみないとわからないですからね。――たとえば、大手ディベロッパーさんが自社開発で作っていた作品を、どうせなら応募してみようか、となる可能性もありますよね。

齊藤

 ぜんぜんありますね。

時田

 実際、お付き合いのある会社さんも、手が空いたときに自主企画のゲームを作っていたりして、毎年の“東京ゲームショウ”に出されていますからね。プロが仕事をしながら小規模だけどおもしろい作品を作る。そうやって研ぎ澄ましているものがある可能性は高いと思います。

齊藤

 個人クリエイターが数ヵ月で作ったものと、ディベロッパーさんが少人数で数年かけてじっくり作ってきたもの、その対決はちょっと見てみたいですね。――5月に開催された“ビットサミット”では、齊藤さんはサイバーコネクトツーの松山社長と対談をされていましたよね。もしかしたら松山さんが応募してくる可能性も?

齊藤

 あると思います。むしろ応募してこいよ、ぐらいに(笑)。

時田

 (笑)。

齊藤

 でも今回ビットサミットに行ってよかったのは、思っていた以上に個人クリエイターさんたちがしっかりしたものを作れる環境になっているのを知れたことですね。ゲームを見て、何人ぐらいで作ったのかと思って聞いたら、個人制作で、それも半年くらいで作りましたと言うんですよね。相当時間をかけたのかと思ったのに。半年でこのレベルのゲームが作れるのかとちょっとビックリしました。

時田

 筐体から作っちゃう人もいましたよね。音ゲーなんですけど、筐体を叩いた強さに反応するっていう作品があったんですよ。それで、クリアーすると最後にシールが出てくるんです。筐体の設計から全部やっているのはすごかったですね。――ちなみに、そういった筐体レベルで作った作品は本コンテストの対象になるのでしょうか。

齊藤

 今回は大勢で審査する前提なので、外部デバイスをその人数分作ってもらうのは難しいと思っています。あくまでコントローラーやキーボード、マウス、いわゆる標準的な環境で遊べるものを対象としています。なので、VRもまだちょっと難しいですね。――本コンテストが発表されたのはビットサミットの直前のタイミングでしたが、やはりスクウェア・エニックスさんの中ではインディーゲームとして扱うことになるのでしょうか。

齊藤

 最初から狙っていたというよりは、コンテストにいちばん興味を持ってくれる人が集まるビットサミットがちょうどあるので、そこに間に合わせたい、というのはありましたね。けっこう際どかったですけど、何とか滑り込みで(笑)。でも実際、会場では皆さんにコンテストのことを言われましたよ。ほかの会社さんからも、「現場はコンテストの話題で持ち切りでした」との声をいただくことが多かったです。

時田

 ここ1年くらいで、他社さんも含めてインディーゲーム市場の個人クリエイターを発掘する動きが増えましたよね。やっぱり、新しいIPを作ることと、若い世代のものづくり。このふたつが大きなキーなんじゃないかと思います。――10億円あれば自社のラインで新作を1本開発できそうにも思えますが。

齊藤

 自社のラインは継続して行っていきますよ。それはそれです。やっぱり社内外問わず、日本のクリエイターにがんばってもらいたい、という気持ちもあります。今回は日本在住の方を対象にしていますし、それこそ当時の堀井さんや中村さんのように、コンテストをきっかけに世界で認められるクリエイターになってくれたら、それは私たちにとってもいいことだと思っているので。

時田

 堀井さんや中村さんが応募した当時は、そもそもパソコンを持っている人が珍しい時代だったじゃないですか。でもいまは誰でもパソコンを持っていて、ミドルウェアも普及しているし、AIもあります。いまや学生さんや社会人の方、ゲーム業界にいない人でもゲームを作れるんですよね。そういう意味では、どんな人がどう参戦してくるか、どんなものが出てくるか楽しみですよね。――別の業界の方が作った作品であれば、ゲーム業界では出てこないような発想のものもあるかもしれないですね。

時田

 たとえば、研究者の方が新薬を開発するゲームを作るかもしれないですよね。それが理にかなっていて、でも『ドクターマリオ』のような楽しさもある、みたいな。そういうものが出てくる可能性もあるんですよね。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

――最近は、いわゆるスタークリエイターの方もインディー市場から出てくる印象がありますが、今回のコンテストも新たなスターが生まれるきっかけになりそうですね。

時田

 やっぱりインディーのほうが、作風というか個性の色が強烈に出やすいですよね。生高橋さんという方が作った『Öoo』というゲームは、シンプルなパズルゲームなんですけど、世界観がすごくいいんですよ。しかもノンバーバル(言語を介さないもの)なので、すごくインパクトがありますね。

齊藤

 若い人たちもいっぱいものを作っているんですけど、世の中になかなか伝わらないんですよね。開発環境がよりよく、手軽に揃えやすくなったぶん、ライバルも増えています。年間何万本というタイトルが出てくるなかで、お客さんに気付いてもらえるタイトルは、ほんのひと握りなんですよ。その中で、少なくともこのコンテストで入選したとなれば、ほかとは一線を画す知名度になれるはずなので、そこはクリエイターの方にとってもメリットが大きいんじゃないかと思います。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

時田

 お笑いで言うところの“M-1”みたいなものですよね。ブレイクのきっかけにもなるといいなと。

過去作品のオマージュでも、今だから「新しい」かもしれない

――3億円を勝ち取ったクリエイターとなれば注目度は相当高くなりそうです。本コンテストにおいて、おふたりはどのような役割を担われているのでしょうか。

齊藤

 ビットサミットで発表した際にも、今回のコンテストに関わっている人間として話はしたんですけど、あまり私や時田の色を見せてしまうと、たとえば『ニーア』っぽいものがいいのか、『半熟英雄』的なものを求めているのか、みたいな先入観が生まれてしまうと思ったんですよ。

 今回、私は審査員のひとりなんですけど、クリエイターとして強くコミットしているわけではなく、あくまで数いる審査員のうちのひとりとして参加しています。そのうえで、コンテストの運営事務局を統括する立場として携わっている感じですね。

時田

 僕は、これまでさまざまなゲームの審査に携わらせていただいた経験から、審査システムの吟味と構築、運営まわりに関わっています。

齊藤

 僕らも僕らで、『アストロノーカ』とか『Voice of Cards』とか、あるいは『ナナシ ノ ゲエム』を作ってきた人間なので、ニッチ寄りという意味では皆さんに近いかもしれないです。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

――最終的におふたりが「好みじゃない」などと言って判定がひっくり返るようなことはないと。

齊藤

 ないですね。――審査についてもうかがいたいのですが、本コンテストでは映像審査、プレイアブル審査、総合及び面接の最終審査と、3段階の審査が行われるそうですね。一次、二次審査では一般ユーザーも機密保持契約を結んだうえで審査に参加してもらう、というのがユニークな点かと思われますが、なぜこのような仕組みに?

齊藤

 私たちの好みに合う作品が、必ずしもヒット作になるわけではないじゃないですか。信頼性を担保できるものは何かと考えたときに、やっぱり各種サイトのレビューが浮かんだんですよね。あれって、集合知じゃないですか。

 もちろん、ユーザーレビューと同じ規模でやるのは難しいですけど、なるべくたくさんの人に作品を見て、触ってもらって、それをレビューしてもらう形で審査をすれば、いまの市場にマッチした作品を掘り出せると思ったんです。ここは早い段階から話し合って決めていました。

――プロのクリエイターからするとビジネス的な視点がどうしても絡んでくると思いますが、一般のユーザーは単純におもしろいかどうかの判断をするはずなので、評価の方向性もほかのコンテストとは違ってきそうですよね。

時田

 そうなんですよね。僕らはどうしてもマーケットを考えざるを得なくて、考えすぎてしまう部分もあると思うんです。本当はストレートに出したほうがいいけど、前例があるから捻らなきゃ、みたいになった結果届きにくくなるケースもあるんですよね。

 でも作り手じゃない方々は、純粋におもしろいとか、気軽に遊べるとか、絵はイマイチだけど楽しそうとか、すごく素直に反応してくれるんですよね。いまはネットでものすごい数の人が見て判断するので、そこはひとつの正義になるのかな、と。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

――審査に入ってもらうユーザーもそれなりの数になるのでしょうか。

時田

 そうですね。かつ、一次審査の動画審査については一般ユーザーのみで審査を行います。

齊藤

 学生から社会人まで年齢も幅広く、ゲームを年間にどれくらい遊んでいるか、みたいなところもバラけさせた審査員を集めようと思っています。

時田

 二次審査に進むと、そこに我々のような開発メンバー、プロデューサーなども入って、実際にゲームを遊んでのレビューを行います。

 三次審査では厳選された作品を総合的に見つつ、ビジネスパートナーとしての面談をしたうえで、最後まで作り切れる人かどうかを判断させていただきます。

――三次審査まで行くと、プロダクトとして世に出せるかどうかを判断する段階になっているわけですね。

齊藤

 そのあたりの話もする必要が出てくると思います。ただ、実際にやってみないとどれくらいのスケールのものが来るかわからないんですよね。いまって、インディーゲームでもフルプライスのゲームに負けないくらいの作品も少なくないじゃないですか。だから本当に想像もつかないですね。

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時田

 『エクスペディション33』とかも、インディーゲームなのかAAAならぬ2.5Aなのか、みたいな感じですしね。

齊藤

 そういう意味では、どんなものが来るのか楽しみですよね。本当にワンコンセプトの、ここだけを突き詰めて作ったんです、みたいなものもおもしろい、新しいと判断できるかもしれませんし。

時田

 あとは、いまはタイパ(タイムパフォーマンス)も大きいと思うんですよね。単にボリュームがあればいいのではなくて、短いけど新しいRPG、みたいな発想もあると思います。そういった部分も含めて、既存のジャンルでどう攻めてくるか、いまならではの新しい部分が出てきてくれるんじゃないか、と期待しています。非常に楽しみですね。――コンテストの公式サイトでは、審査基準として“新規性”、“独創性”、“娯楽性”、“完成度”の4点が挙げられています。これは、いずれかが突出していることよりも、満遍なく求められる要素ということでしょうか。

齊藤

 すべては見ますけど、全部において及第点なら即受賞、とは思っていないです。ほかの要素がいまいちでも、何かひとつ飛び抜けていておもしろければいいと思います。

 この4つって、当たり前のことしか書いていないんですよ。新しくて、オリジナリティがあって、楽しくて、完成度はまた別の軸ですけど、それも当然求められるものですよね。なので、あまりそこに縛られず、ご自身でおもしろいと思うものを出してほしいです。その後はフラットに、ゲームとしておもしろいかどうかで評価していきますから。

時田

 いわゆるレーダーチャートでゲームを表したときに、バランスがいいからおもしろい、というわけでもないじゃないですか。ものすごく尖った形だけどおもしろい、みたいな作品もあると思うので、多分それぞれに方向性の違った作品が出てくるんじゃないかなと思います。

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齊藤

 あと、「僕のゲームはニッチだからコンテストには向いていないです」みたいに思っている人もいると思うんですよ。でもいまの世界って、ニッチもかき集めたらまあまあの人数になるんです。昔はニッチな思考の人がそれぞれに点在していましたけど、いまはSNSなどでコミュニティが形成されていて、ニッチがニッチじゃなくなっているんですよね。そこもあまりこだわらなくていいかなと思っています。

時田

 いまって、逆にいわゆるメジャーがないですよね。国民的なのはMrs. GREEN APPLEくらいかな、みたいな(笑)。アイドルグループもマンガもアニメも、ものすごい種類がある中でみんな「私はこれが好き」を追い求める時代じゃないですか。そういう意味では、いろいろなベクトルに尖った作品がずらっと並んだら壮観ですよね。――今回お話をおうかがいしている中でも、新規性と独創性はとくに重視されているのかな、という印象を受けます。

齊藤

 やっぱり「新しいものを作りたい」とか、「俺の個性を見てくれ」とか、そういう想いを持った人は多いと思うんですよ。ただ、もう完全に新しいものなんてなかなかないんですよね。だからいっそ、20年前、30年前にあったもの、遊びとしては古今東西にあるものをゲームに落とし込んで、それが新しく見えればいいって思っています。

 昔あったゲームを知っている人からすると、「これってあれのオマージュだよね」となりますけど、いま遊ぶ人からすれば「めっちゃ新しいじゃん」となることもあると思うんです。それも新規性、独創性と呼んでいいと思うんですよね。

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時田

 いわゆる温故知新ですよね。最近はもう、バンド好きの学生が「最近いいバンドを見つけたんだ。ビートルズって知ってる?」みたいに言う時代ですから(笑)。――歴史を知っていると、昔のあのゲームに似ているな、みたいに考えてしまいがちですが、若い世代からすればそこはあまり関係ないですからね。

齊藤

 たまに自分でも嫌になりますよ。マンガとかを読んでいるときに、「これは昔のこの要素を取り入れているよね」みたいに考えてしまうことがあって(笑)。いまそれを楽しんでいる人には、そんなこと関係ないんですよね。

時田

 普遍的なものもあれば、時代的なものもありますから、そこをどうブレンドするかですよね。

齊藤

 よく“時代的に早すぎた作品”みたいな言いかたをされる作品もありますが、そういう作品がいまなら受けるかもしれないから、自分のオリジナリティを込めつつ新しい形に昇華するというのもぜんぜんアリだと思います。

時田

 いまの時代にマッチするかもそうですし、たくさん出てくる中で被る可能性もあって。その中で選ばれる強運の持ち主がどれだけ出てくるか、そういう意味でも楽しみです。

エンターテインメントは加点式で評価すべき。日本人の特性に合わせ“引き算”ではない審査に

――最初の審査はユーザーのみが行うということでしたが、ここを動画審査に限定されたのはどういった意図があるのでしょうか。

時田

 企画書も後から審査対象になるんですけど、企画書を読むのにも選球眼というか、経験が必要なんですよね。そもそも一般の人たちは最初に動画を見ておもしろそうかどうかを判断するので、まずは動画にしましょう、と。動画で見てわかるおもしろさと、実際に触って感じるおもしろさは、また違うと思うんですよ。そこの見せかたでも個性が出るかな、と。――おもしろいゲームでも編集でつまらなさそうに見せてしまったら、一次審査を突破できないかもしれませんね。

時田

 その逆もあり得るんですよね。編集が絶妙だったけど、遊んでみたら……みたいな。

齊藤

 ただ、いまの時代に売れたりバズったりする作品って、やっぱり見ているだけでもおもしろそうなんですよね。それはひとつ大事な要素かなと思います。遊んでおもしろいのはもちろん、視覚的に見ていておもしろいと思えることは重視しています。

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――動画の内容としては、ゲームシステムを紹介するだけでなく、ゲーム実況風の動画で応募してもいいんですよね。

時田

 最大20分としているので、そこはセンスが出ると思います。

齊藤

 がんばりどころですね(笑)。でも、正直撮って出しでもおもしろさは伝わると思うんですよ。ここもこだわりを見せられる部分ですね。ふつうだったら、3分くらいにまとめると思うんです。でもゲームはつかみが大事なので、20分耐えられる動画を作るというのも、ひとつ完成度を上げることにつながるかもしれません。――アニメ1本分くらいの時間ですからね。二次審査からは御社の社員の方々も審査に加わりますが、審査項目などは一般ユーザーの方と同じなのでしょうか。

時田

 すべて同じ項目ですし、一票が持つ重みも同じです。――評価はたとえば、10点満点で新規性が8点、独創性が7点、といった形で採点していくのでしょうか。

時田

 審査審が点数をつけるのではなく、項目ごとに用意された評価コメントに近い選択肢を選んでもらい、その結果を内部的に点数換算して集計する形ですね。それも単純な1~5点ではなく、良い作品をしっかり評価できるよう差をつけた配点設計にするつもりです。日本人って引き算の文化が強いと思うんですけど、エンターテインメントは加点式で評価するべきなんですよね。なので、いいものを評価できるよう、点数ではなく評価コメントを選ぶ形にしようと思っています。

齊藤

 そうそう。日本人って、点数をつけるとなると同じ点数をつけたがるんですよね。――確かに、アンケートなどでもその傾向はありますよね。

時田

 5段階評価、3段階評価は真ん中を基準にしてしまうからよくないですよね。平均点が高いだけではなく、ニッチだけどこだわりが強く出ているものがしっかり残るようなシステムを考えています。

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――その評価システムは、動画審査でもプレイアブル審査でも変わらないのでしょうか。

時田

 そうです。そこが非常に重要ですね。かつ、一次審査と二次審査はそれぞれまったく別の人に行ってもらいます。何千作品も応募があるとさすがに全部は見切れないので、審査員をチームに分けて、分担して見てもらうつもりです。

齊藤

 だから、そのグループ分けにも運があるわけですよね。激戦区が生まれるかもしれませんし。

時田

 そうなんですよね。どうやってグループをシャッフルするかは、けっこう大きな命題かなと思っています。――たとえばジャンルでグループ分けしたり、といった方式でしょうか。

時田

 ジャンルではないですかね。学生と社会人、一般の大学生と専門学生、それらも切り分けず、いろいろなステータスがバラけるようなグルーピングがいいかなと思っています。オペレーションがすごくたいへんですが(笑)。――そういった審査を経て、各賞の作品が選ばれていくと。

時田

 多分、審査はめちゃくちゃ揉めますよ。大ゲンカになるでしょうね(笑)。満場一致はまずないと思います。

齊藤

 いま、採点システムを私と時田でテストしているんですよ。世に出ているインディーゲームで、そこまで目立つ売れかたをしていない作品を並べて、実際に動画だけを見て採点するんですよ。ただ、採点結果が見事にバラバラで(笑)。――さっそくケンカに(笑)。

時田

 好みも違うし、作ってきたジャンルも違うので、順位がぜんぜん違ってくるんですよ。

齊藤

 ただ、たとえば100人くらいの採点結果が集まれば、ある程度納得のいく順番がつくんじゃないかと思っています。

時田

 むしろ、僕らが極端なんですよね。自分の作風とか芸風、ミッションみたいなものを持っているので、どうしてもそういう目線で見てしまうんです。

齊藤

 イベントシーンばっかり並べてあるのは嫌だなあ、とかは仕事柄思ってしまいますね(笑)。

時田

 ナレーションが多いとちょっと、とか(笑)。

完全新規が難しい時代。精神的続編もアリ?

――コンテストとしては新たなIPを求めているということでしたが、たとえば『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』の派生作品で、でも完全新作にも見える、みたいな作品もあり得るのでしょうか。

齊藤

 応募していただくのは、未発売のオリジナル作品だけが対象です。ただ、受賞した作品や、受賞にあと一歩届かなかったものも含めて、たとえばもっと市場に受けいれられやすいよう、既存IPのキャラクターにしてみませんか、みたいな提案が出る可能性は十分あるかなと思います。――ゲーム自体に大きな変更は加えず、デザイン面などで既存IPを活用する可能性もあると。

齊藤

 もちろん、そういう提案も採用するかどうかはクリエイターの方にお任せします。昔のコンテストも、この3点だけ調整したら商品としてもう一段階上に行くんじゃないか、みたいな提案はしていたんですよ。当時も最終的な決定権はクリエイターの方にあったので、今回もそれと同じようにするつもりです。ただ、たとえば最優秀賞に選ばれるような作品であれば、既存IPを使うことなくそのまま行けるだろうとは思っています。

時田

 勝手に『アストロノーカ2』を作ってくる人もいるかもしれないですからね。

齊藤

 いるかもしれない(笑)。さすがに『アストロノーカ2』ですと言ってこられると規約から外れてしまいますが、遺伝的アルゴリズムで進化する困った奴らをトラップで退治するゲームですというゲームであれば、「どこかで見たことあるかも……」くらいに受け止められるかもしれないですね。――精神的続編じゃないですけど、そこに独自性や新規性があればそれもいいと。

時田

 “○○ライク”みたいな作品もそうじゃないですか。もうジャンルになっているところもありますからね。――完全新規のシステム、みたいなものはなかなか難しいですよね。

齊藤

 たとえば、位置情報サービスやVR技術のように、新しいテクノロジーから新たな遊びが生まれることはありますけどね。でも、そうそうないですよ。

時田

 あとは、違う分野から持ってきたアイデアをゲームにシフトさせて、新しく見せる、みたいなやりかたもありますよね。映画やマンガでよくあることを、うまくゲームに落とし込んでみたらそれが新しかった、なんてこともあると思います。――Netflixでもゲームのインタラクティブ性を映像作品に取り入れたコンテンツが登場しましたし、そういった逆輸入もあり得るかもしれないですね。受賞作品は出版、配信、マーケティングを含むパブリッシングを全面的に支援する、とも書かれていますが、このあたりももう少しうかがってよろしいでしょうか。

齊藤

 基本的には、受賞作品はスクウェア・エニックスブランドで出そうと思っています。ゲームとしてリリースするのはもちろん、うちは出版やグッズ販売も行っているので、いわゆるIPとして盛り上げていくことに関して、全面的に協力する、ということですね。ここは私たちと組むことで感じていただけるいちばんのメリットかと思います。

時田

 グッズ展開やクロスメディアなど、いろいろな展開がしやすくなるようなイメージですね。――先ほどもお話にあったように、受賞後にクオリティアップのサポートも受けられると。

齊藤

 そうですね。テクニカルなアドバイスもできると思います。とはいえ、旬もあると思うので、あまり時間をかけすぎてもよくないと思うんですよね。やっぱりインディーゲームのいいところって、私たちならもうちょっと時間をかけてしまうところを潔くここで出す、みたいなスピード感だと思うんです。そこに対するアップデート頻度もすごいですよね。そこはひとつ羨ましいと思うところでもありますし、今回のコンテストでは実現したいと思っている部分です。

時田

 僕らだとQAを挟んで、やっぱりやるか、やらないか……みたいに悩んでしまうんですけど、「今回はこれでいいです」と思いきれるところがいいですよね。――スクウェア・エニックスさんの作品として出すからには、御社側の担当がついて、QAなどもこなしてはいくのでしょうか。

齊藤

 そうですね。私がプロデュースを担当する可能性もあると思いますし、別のプロデューサーになるかもしれないですが、QAは最終的には我々の水準でやります。ローカライズの必要があれば、そこも当然サポートします。

時田

 ただ、どこまでやるかはクリエイターの人たちが、責任を持ってジャッジしてほしいんですよ。

齊藤

 そこもクリエイターの意志を尊重する部分ですね。ゲームバランスのチューニングなどもありますけど、あくまでアドバイスに留めて、口出しはしないということは徹底しようと思っています。

時田

 たとえば『ホロウナイト』みたいに、絵はかわいいんだけど難しい、みたいなのもあれはあれでひとつの個性や価値だと思うんですよね。そこはやはり作っている本人にこだわってほしいです。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

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――そういったクリエイターの意志というのを確認する意味でも、三次審査で面接を行われるわけですか?

齊藤

 そうですね。めちゃくちゃセンスがあっておもしろい作品でも、「いや、商品化する気はないんです」みたいなことだと、いっしょに手を取り合ってやっていくのは厳しいじゃないですか。さすがにないとは思いますけど。

 でもやっぱり、最後は熱意や情熱みたいなものが大事になってくると思うんですよ。そういったところで互いに2人3脚でやっていけそうかというのは、こちらとしても見極めたいですし、応募者にも同じように見極めていただきたいです。

時田

 やっぱり人と人なので、そこでしっかり合意できないと、いっしょには戦っていけないですよね。

齊藤

 通常の開発なら、最初にそれをやるんですよ。でも今回はそうもいかないので、最終審査で行っています。――たとえば、ものすごくおもしろいんだけどパブリッシングには向いていない、みたいな作品が受賞したとしても、そのまま出すこともあり得るのでしょうか。

齊藤

 パブリッシングに向いていないから採らない、みたいなことはないと思います。

時田

 それも覚悟の部分ですよね。でも、パブリッシングに向かないってどんなものでしょうね。

齊藤

 何だろう。クオリティ面に問題があれば選考の時点でわかると思うので、たとえばめちゃくちゃエログロで、ウチから出すのはさすがに厳しい、みたいなものがあったら難しいかもしれないですね。――そういった面を考慮しないわけではないにしても、そこまで極端に重要視しているわけではないと。

齊藤

 もちろんです。最終的にはゲームとして出したいんですけど、ちゃんと勝ち上がってきた作品はしっかりこちらも選んであげたいなと思います。

時田

 審査員の数もそれなりに上ると思うので、一次、二次、三次と上がってきたものは、間違いなくそれなりのおもしろさを担保できていると思います。僕もいろいろなコンテストで審査員をしてきたんですけど、やっぱり個性的で、技術的にもちゃんとしていて、それなりにちゃんと遊べるものが残るんですよね。いまは本当に皆さんクオリティの高いものを作れるので、そのあたりはあまり心配していません。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

――入賞作品については、賞金の支払いとは別に、著作権を応募者と御社で50%ずつ共有するというのも珍しい点かなと思います。

齊藤

 これも、過去に行っていたコンテストがこの形式だったんです。条件としてはそんなに変わらないんですけど、2人3脚感は出ると思うんですよ。二次創作を我々のほうでやると言っても、「共同制作だからこちらが好き勝手やりますよ」ではなくて、決めるべきところはクリエイターが決めるんですよね。そこは安心してもらいたいです。

時田

 ある意味、マンガ家さんと編集者さんの役割分担に近いですね。

AI時代でも、大切なのは“自分のゲームはこう”と言えること

――本コンテストではAIの利用ガイドラインを策定しつつ、AIによる生成などの利用も認めていますね。幅広く募集するうえでは、ここは必要な部分だということでしょうか。

齊藤

 やっぱり、個人や少人数で作られている方って、何かしらの形でAIを補助ツールとして使わないと難しいことも多いと思うんですよね。AIの使用自体は、どこにどういう形で使ったかをちゃんと申請してもらえれば、コンテストとしては問題ありません。いざ商品として出すとなったときに、必要に応じてそこを作り直す可能性があるということは規約でも明文化しています。

 いわゆるゲームエンジンがなかった時代はフルスクラッチで作っていましたけど、エンジンの登場によって骨子を作る必要がなくなって、そのぶん肉付けに時間を取れるようになりましたよね。それと同じように、AIはツールとしては優秀だと思っています。あくまでもゲーム開発の補助をするツールであり、権利侵害の心配がないという前提であれば、コンテストとしてその使用を止めません。

時田

 商品化する上では、正直に申告してもらうことがとても大事なので、応募の時にAI利用箇所や利用方法を申告してもらいます。――下手すると、プログラムがわからなくてもバイブコーディング(AIに作りたいものの雰囲気を伝えながら開発を進める手法)だけで作れてしまう可能性もありますよね。

齊藤

 そう。ぜんぜんあり得ますよ。

時田

 むしろそのほうが、思ってもみなかったゲームができる可能性もありますからね。ただ、デバッグができないんですけど(笑)。そのバグを楽しむゲーム、とかになってもおもしろいですね。

齊藤

 ただ、新しい技術が出てきても絶対に変わらないなと思うのは、やっぱり一本、筋が通っているかどうかなんですよね。頑固であることは大事かもしれません。自分の世界はこうなんだ、自分のゲームはこうなんだ、と最後に言えることは絶対に大事ですね。

時田

 以前桜井さん(桜井政博氏)も自身のYouTubeチャンネルの動画でおっしゃっていましたけど、企画書は瞬発力が大事なんですよね。最初の勢いがないと、何をやってもダメなんですよ。最初に思いついたものがけっきょく正解だった、みたいなこともよくあるので、そこはもう、「迷わず行けよ。行けばわかるさ(※)」で行けるかどうかですね。

※プロレスラー・アントニオ猪木氏が引退の際に引用した詩の一節。時田氏はプロレス好きでも知られている。

齊藤

 ファミ通さんもいろいろなクリエイターの方にインタビューをされていると思いますけど、クリエイターって基本的に変な人しかいないじゃないですか。――そうですね、と答えていいものか迷いますが(笑)。ご自身で表現したいものがしっかりある方が多いと感じますね。

齊藤

 筋が通っていますよね、きれいに言えば(笑)。

時田

 40年前に“ゲーム・ホビープログラムコンテスト”が開催されたときは、まだゲーム業界自体がなくて、なんかものを作りたい、変な人が集まってきただけの世界だったんですよ。パソコンってどうやって使うの、とプログラマーに聞きながらポチポチいじって、みたいなところから始まっていたんですよね。いまはもう当たり前の技術になりましたけど、やりたいこと、好きなことがある人というのは変わっていないと思います。

齊藤

 情熱の面もそうですよね。『めっちゃカメレオン』とか、尋常じゃないペースでアップデートをしているじゃないですか。やっぱり、好きなんだろうなと思いますよ。楽しくてしょうがないんだろうな、って。

賞金10億円はスクエニの「本気」の意思表示。“令和の堀井雄二、中村光一”は生まれるか。齊藤陽介氏&時田貴司氏に訊く、覚悟のゲームコンテスト

時田

 寝ようと思ったけど、思いついちゃったからそのままの勢いで作る、みたいな感じなんだろうなと思いますよね。

齊藤

 そういうのが大事だと思いますね。ある意味で、クリエイターとしてはフリーの人がうらやましい部分もあるんですよ。会社員だと、とことんやりたいと思っても業務時間には限りがありますからね。もちろん、そのスタイルが合う人もいると思いますけど。――ファミコンのころは皆さん会社に寝泊まりされていましたけど、いまはそのあたりも大きく変わりましたからね。

時田

 あのころは、みんな独身だったから寂しくて帰らない、みたいなのもあったと思います。会社でゲームも遊べますし(笑)。でもやっぱり、パッと思いついた瞬間に仕事ができる、という環境は強いですよね。もちろん、そういう取り組みかたを推奨しているわけではないんですけど。僕もアイデアが浮かんだ瞬間にメモを残したりはしていたんですけど、お酒を飲んだ後のメモを次の日に見て、「なんだこれ」みたいになるっていう(笑)。

齊藤

 あるあるです。――おふたりは長年ゲーム業界にいらっしゃって、多くの作品を手掛けられてきました。今回のようなコンテストでないと、いまゲーム業界で新しい才能を発掘するのは難しいのでしょうか。

齊藤

 必ずしもそうではないと思います。たとえば、私が最初に『アストロノーカ』を作る前、CGアニメの『ウゴウゴルーガ』でおもしろいCGを作っていた人たちが、のちに『ジャンピングフラッシュ!』シリーズを作ったのを見たんですよ。この人たちとならおもしろいものが作れそうだなと思って、タウンページで会社の番号を調べて、公衆電話から電話をかけたんです。

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『ジャンピングフラッシュ!アロハ男爵ファンキー大作戦の巻』のゲーム画面。(C) 1995 Sony Computer Entertainment Inc.

――いまから考えるとすごいアプローチですね。

齊藤

 時代は変わりましたけど、そうやって新しいものを作ろうとしている人たちの情報は、昔よりも得やすくなったじゃないですか。

時田

 アクセスも格段にしやすくなりましたしね。

齊藤

 そうそう。ただ、そういう人の数が膨大に増えたぶん、情報を取りに行くにしてもどの情報を取ればいいんだ、という問題が出てきているんですよね。なので今回は、「俺がやってやるぜ」という方々に、私たちが見られる範囲内まで来てもらうんです。いっしょにやってみたいと思える人も見つけやすいと思うんですよ。

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時田

 昔は尖った人たちや、技術にコミットしている人たちって、突出していたし目立っていたんですよね。いまは自分から探しに行くと、砂漠で砂粒を選び取るようなことになってしまうんですよ。だから来てもらいましょうという考えかたですね。――おふたりがこれまでに作られてきたゲームの中で、発売するまでに苦労はあったものの、結果的に大きな反響を得られた経験などをうかがえればと思うのですが、いかがでしょうか。

齊藤

 難易度が高かったという意味で言うと、まだ商業のMMORPGがない時代に作った『クロスゲート』ですかね。時代的にも早かったのと、当時は会社がいったんパソコンから離れていた時代だったので、もう一度PCゲームソフト売り場の棚を作るところから始めるとか、いわゆるサブスクリプションもそんなにない時代に、毎月の課金という仕組みを通すのはたいへんでした。――MMORPGがまだ普及していないタイミングだと、そもそも理解してもらうのがたいへんですよね。

齊藤

 そうなんですよ。あとは、『ニーア オートマタ』も苦労はしましたね。前作が売れなかったのに、またやるのか、って。でも、やるんですよ。――時田さんはいかがですか?

時田

 会社が合併して、『ドラクエ』と『FF』の大きな会社になったときに、ふつうのものを作っていたら生き残れないなと思ったんですよ。だから、『ドラクエ』や『FF』に絶対できないことは何だろう、と考えたんです。そこで作ったのが『半熟英雄 対 3D』でした。『半熟英雄』はギャグもありだし、リアルタイムストラテジーだし、10年ぶりの復活だから主人公たちは2Dのまま、敵だけ3Dにして、といろいろやったのですが、売上は良好とは言えませんでした。

 その後ニンテンドーDSで外伝作品となる『

エッグモンスターHERO』を作って、IPとして低年齢層にも広げようとがんばったのですが、これも結果が振るわなかったんですよね。自分でシリーズに幕を下ろしてしまったのは反省していますけど、チャレンジした、やりきったという意味では後悔はしていません。

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――これをやってよかった、ということはありますか?

時田

 よかった例としては、いまクリエイティブスタジオ5(通称:浅野チーム)のヘッドを務めている浅野(浅野智也氏)と、『FFIV』のニンテンドーDS版でいっしょになったんですよ。僕がディレクターで、彼がプロデューサーですね。当時、ニンテンドーDSで本編のリメイクが出た瞬間に続編がモバイルで遊べたらアツいなと思って、『FF』のポータルアプリで週刊連載みたいに毎週ダウンロードさせたかったんですよ。でもその話をしたらモバイルの開発チームから「バカを言わないでください。QAっていうものがあるんです」と言われてしまって(笑)。――さすがに週刊ペースは厳しいですよね。

時田

 じゃあ、隔週ならどうだ、と言ったらそれも無理で。結果、3週間に1回のペースになりました。でも、連載形式で続編が遊べるようになって、1年間を楽しむことができたのは、タイミングの重要性を強く実感できたことでしたね。当時、まだガラケーのニーズがある時期だったのもよくて、運ってこういうことなんだな、というのを実感できたタイトルでした。失敗も多いんですけど、そういうことが10年に1回くらいあるから、ここまでクビにならずに済んでいるのかな、と。――そういう意味では、今回のコンテストでも連作のようなアイデアが出てくる可能性もありますよね。応募としては1作品だけど、こういうシリーズ展開を考えています、といった感じで。

齊藤

 それもアリだと思いますね。

時田

 いきなりパート1から10まで応募してきたりするんでしょうね。まさか4でこうなるとは、ダース○イダーだったんだ、みたいな(笑)。

齊藤

 おもしろいけど、その場合はちゃんと明記しておいてほしいですね。歯抜けになった状態で一次審査を通ってこられても混乱してしまうので(笑)。――今回のコンテストは金額などの規模感を見ると、ディベロッパーさんなどプロの方が強いものになるのかとも思いましたが、お話をうかがってみると決してそうではなく、個人クリエイターにもチャンスがあるように感じました。

齊藤

 そうです。先日の“東京ゲームショウ2026”では専門学校のブースにも行ったんですけど、「この賞金額だとうちの学生はちょっときびしそうです」と言うところもあれば、「3、4チーム作って全力でいきます!」みたいな学校もあって、それもおもしろかったですね。前者の学校さんには「いや、生徒さんたちは思っている以上にできますよ」みたいに私たちがフォローを入れたりしていましたけど(笑)。

時田

 僕も専門学校には毎年何校か回らせてもらっているんですけど、やっぱり先生がアツいところは生徒もアツいというか、ちゃんと育っているんですよね。甲子園じゃないですけど。ふたりでニンテンドーDSのソフトを半年で作ったり、フレームを動かすことで解決できるユニークなパズルを作ったり、アツい先生のもとではいい生徒が育つので、そういった学生の作品も楽しみです。――ビットサミットで登壇された際、齊藤さんから「第2の『パラノマサイト』を」といったお話もありました。

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齊藤

 これは本当は、第2の『めっちゃカメレオン』、第2の『8番出口』と言いたかったのですが、他社のタイトル名を出すと怒られそうだったので(笑)。自社のもので、わりと少人数、短期間で制作した『パラノマサイト』を例としてあげたんですよね。もちろん、『めっちゃカメレオン』も『8番出口』も、簡単に後を追えるものでないことは理解しています。ただ、少人数、短期間で作って出してみたら大ヒットに、という結果になってくれたらうれしいですね。

時田

 ちょっと前の作品でいえば、『クッキークリッカー』みたいなものですよね。

迷うくらいならまずは応募を! 宝くじだって買わないと当たらない

――本日はいろいろとお話をおうかがいできました。最後に、本コンテストに興味を持っているクリエイターの方を含め、このインタビューを読まれている読者へのメッセージをお願いします。

齊藤

 よく耳にするのが、「応募するの、迷っているんですよ」という声です。迷うくらいなら、ぜひ応募してください。私たちがゲームを作っていても、「これはおもしろいんだろうか」と迷う瞬間はあります。ずっと触り続けていると自分の中でわからなくなってくるんですよね。でも、世に出してみたら評価されることもあります。

 宝くじは買わないと当たらないし、コンテストだって応募しないと受賞できないんです。迷うくらいならぜひ応募していただいて、自分の個性、アイデンティティをぶつけてほしいです。ぜひ、お待ちしています。

時田

 先ほどもお伝えしましたけど、いまはもう誰でも遊ぶ大ヒットみたいなことはほとんどなくなってきたと思います。そのぶん、みんなニッチなもの、自分が本当に好きなものを求めているんですよね。だから、あなたが思う好きなものを思いっきりゲームにしてもらったら、絶対に刺さる人がいるはずです。そこからゲームが広がって、それを好きな人たちが集まればそれなりのヒットにはなると思います。

 ぜひ、自分が好きなものを、それが好きな人に向けて作り出して、楽しませてください。そういう作品を心待ちにしております。

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マウスコンピューターでゲーミングPCを購入

ドスパラでゲーミングPCを購入

来源:ファミ通App · app.famitsu.com