即便塞满喜欢的东西也会变成“自己的游戏”:卡纳奥氏为《DRAPLINE》带入至今未使用的抽屉
好きなものを詰め込んでも,ちゃんと“自分のゲーム”になる。カナヲ氏が「DRAPLINE」に持ち込んだ,これまで使ってこなかった引き出し
4Gamer访谈《DRAPLINE》开发者卡纳奥,详解其将RPG、育成模拟与Roguelite融合进短时长游戏并保留情感依恋的设计思路。该作经历约1年半抢先体验后于2026年9月24日正式发售,正式版追加超6万字剧情与25种结局。早期访问定价1200日元,正式版含税1680日元,开发者使用RPG Maker制作并参与线下展会推广。
約1年半のアーリーアクセスを経て2026年9月24日に正式リリースを迎えた「DRAPLINE」は,ドラゴンの娘を1年間育てながら迫りくる災厄に立ち向かう育成ローグライトだ。
開発を手がけるのは,「被虐のノエル」で知られる個人ゲーム開発者のカナヲ氏。物語を軸にしたアドベンチャーゲームの印象が強い同じ氏だが,本作ではRPG,育成シミュレーション,ローグライトというゲームのコアな要素を前面に押し出している。
なぜ「被虐のノエル」の次にこのゲームだったのか。実際に話を聞くと,「DRAPLINE」にはカナヲ氏がこれまで使ってこなかった“引き出し”と,7年間の連載で身につけたゲーム作りの感覚が,思いのほか深く結びついていた。
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「被虐のノエル」を終えて,使っていなかった引き出しを開ける
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
「DRAPLINE」はアーリーアクセスのころから注目していて,実は今回のインタビュアーを務める私たちは,そのとき掲載したプレイレポの執筆&担当編集コンビなんです。
思っていた以上に反響が大きくて驚きましたし,カナヲさんにもSNSで反応していただけたのがありがたかったです。
カナヲ氏:
こちらこそ,すごくうれしかったです。作り手の私以上に言語化されているなと思って(笑)。
めちゃ丁寧に取り上げてもらえて感謝しかありません。
— カナヲ? (@kanawo_tu0) July 9, 2025
DRAPLINEの概要を知りたい人はもうこれ読んでもらえれば間違いないのではないか…?
4Gamer:
そう言っていただけるとうれしいです(笑)。
Steamでもアーリーアクセス開始時から非常に好評を維持していますが,ここまでの反響は予想していましたか?
カナヲ氏:
まさかここまでとは思っていませんでした。大々的にプロモーションをしたわけでもありませんし,正直,そこまで期待していなかったんです。
4Gamer:
カナヲさんの作品を知っている人なら,やはり「被虐のノエル」を思い浮かべると思います。「DRAPLINE」はかなり印象が違いますよね。「こういうゲームも作るんだ」と驚きました。
カナヲ氏:
「DRAPLINE」は,まず自分がやりたいものをドンと作って,それで満足できればいいかな,ぐらいの気持ちで始めたんです。ジャンルとしても初めての挑戦でしたし,反響がなくても落ち込まないようにしよう,とすら思っていました。
4Gamer:
これまでの作品や,ファンが好きなものを踏まえた作り方もできたと思います。今回は,あえてそこから離れたのでしょうか。
カナヲ氏:
それでいうと,これまでも自分の引き出しにある好きなゲームや作りたいものを使ってはきているんです。
ただ,ファンの皆さんが求めているものも意識しながら,1本のストーリーを熱く描くという引き出しを長く使ってきました。今回は違う引き出しを開けた,という感覚ですね。
4Gamer:
それがRPGや育成シミュレーション,ローグライトだった。
カナヲ氏:
そうですね。個人的に遊ぶのは,RPGや育成シム,ローグライトが多いんです。育てたり,戦略を練ったり,「次の一手はどうしよう」とパソコンの前でブツブツ言いながら遊ぶようなゲームが好きで。
4Gamer:
まさに「DRAPLINE」に入っている要素ですね。
カナヲ氏:
ええ。そういう引き出しは今まであまり使ってこなかったので,「そろそろ,こっちからも出したいぞ」と(笑)。今回は思い切って使ってみようと思ったんです。
4Gamer:
遊んでいて,それはすごく伝わってきました。「アトリエ」や「サモンナイト」のようなゲームの気配も感じて,UIや雰囲気からすごく同世代感があるなと。
カナヲ氏:
そこまでバレてしまうのか,という感じですね(笑)。
実際,「アトリエ」は結構好きですし,「サモンナイト」もそうです。明るい中世ファンタジーというんでしょうか。重々しすぎないけれど,剣と魔法の世界がしっかりあって,羊皮紙があって,少し茶色っぽい色合いで……ああいう世界がずっと好きなんです。
4Gamer:
ゲームの仕組みだけでなく,そういう好みまで入っていたんですね。
カナヲ氏:
そんなに強く出したつもりはなかったんですけど,見る人が見れば分かるぐらいには出ていたみたいですね。
ジャンルは違っても,自分のなかにあるものを使っていることは今までと変わりません。ストーリーやゲーム進行にも,これまでやってきたことがベースにある。それが自分のゲームの色になっているんじゃないかと思います。
長いRPGの楽しさを,短い育成のなかに持ってくる
4Gamer:
「DRAPLINE」はRPG,育成シム,ローグライトの要素を持ちながら,1プレイをかなり短い時間で回せますよね。この形には,どうやってたどり着いたのでしょう。
カナヲ氏:
自分が昔から遊んできたものをそのまま出すなら,RPGになるんです。
でも今の時代,個人開発で長編RPGを作るのは大変ですし,それでSteamというストアで勝負できるのか,という思いもありました。
そこで,短いゲームプレイのなかでRPGの楽しさを出す方法はないかと自分の引き出しを探して,見つけたのがデッキ構築ローグライトでした。
4Gamer:
分かりやすい例だと「Slay the Spire」ですね。
カナヲ氏:
まさに「Slay the Spire」が好きなんです。
本来なら何十時間もかけて楽しむ,RPGや育成シムの戦略を考える部分。戦闘や育成をサクッと遊べるローグライトの良さを合わせれば,自分の好きなものを今の形で出せるんじゃないかと思いました。
4Gamer:
好きなものをたくさん入れているのに,ひとつのゲームとしてまとまっている印象でした。そこには「被虐のノエル」を7年間作ってきた経験もありますか?
カナヲ氏:
あると思います。「これぐらいの盛り上がりや面白さがあれば1本になる」という肌感覚は,「ノエル」を作る前より明確になりましたから。
「ノエル」は複数のエピソードを合わせてひとつのゲームになっていますが,連載形式だったので,作り方としては1時間ぐらいのアドベンチャーゲームを数か月に1本出していました。
全部でひとつの物語ではあるけれど,各エピソードにも起承転結と山場があって,ひとつのゲームとして成立していないといけなかった。
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4Gamer:
「DRAPLINE」も,最初のボスまで遊べば「このゲームはこう楽しむものなんだ」と分かる作りになっています。
カナヲ氏:
ありがとうございます。
「ノエル」以前の作品では,ただ好きなものを積み上げていたんですよ。商業的なことを気にせず気楽に作っていた,と言えば聞こえはいいですけど,いつ崩れるか分からない積み木のようなところもあって。
ゲーム全体としてまとまっているか,というところまではあまり考えられていませんでした。
4Gamer:
連載形式で作ったことで,「何を足すか」だけでなく「何を引くか」も分かるようになった。
カナヲ氏:
そうですね。「これは,やりたいことのために本当に必要な仕組みか」「冗長になっていないか」という視点は得られました。
連載中,「次の章で絶対に盛り上がるから,今回は“溜め”の回にしたい」と思うことも正直あったんです。でも1本ずつ公開している以上,その章がつまらなかったら,そこでユーザーが離れてしまって続きを遊んでもらえない。
全部面白くしないといけないし,途切れさせてはいけない。そこは筋トレみたいに鍛えられたのかもしれません。
4Gamer:
週刊漫画の連載にも近いですね。
バカー担当者:
そう言いながら,カナヲさんは毎回何かしら新しいゲームの仕組みも入れていたんですよ。
クラフトを入れたり,マス目を移動しながら敵と遭遇する仕組みを入れたり。ツクールで作るには結構無茶なこともやっていましたよね。
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カナヲ氏:
やっていました(笑)。
やっぱり「こっちの引き出しも使いたい」という気持ちはあったんですよ。ストーリーを見てほしいけど,「こういうゲームも好きなんだ」「こういうものも作れるんだ」と見せたくて。
ただ,遊んでくれているのは物語を楽しみにしている人たちですから,そこで行き詰まらない程度に調整して,ミニゲーム感覚で楽しんでもらえるようにしていました。
4Gamer:
その「振り落とさない」感覚は「DRAPLINE」にもあります。
最初のボスまでの導線も丁寧ですし,何より驚いたのが,ボスに負けてもそのままリトライできることでした。
カナヲ氏:
ローグライトなら,負けたら終わりが基本ですからね(笑)。
でもそこは,RPGから持ってきた感覚のほうが強いです。まずエンディングまで1周遊び切ってもらうことが大事なので,ストレスなくリトライできたほうがいいと思いました。
バカー担当者:
最初のボスまでの部分は,プロトタイプの時点から本当に作り込んでいましたね。
カナヲ氏:
ゲームの要素の半分以上は見せたいと思って作っていました。
育成して,ボスと戦って,ひとつのステージが終わる。あとはそれを何回か繰り返してラスボスへ進むゲームなので,その流れが面白くなかったら,残りで挽回できないんです。
そこで「合わないな」とやめた人に,「いや,まだ全然始まっていないので,もう少し続けてください」と言うのはちょっと見苦しいかなと。そういう後悔はしたくなかったんです。
バカー担当者:
当時カナヲさんにプレイした感想を伝えたとき,「いろいろと意見はあるだろうけど,スナック菓子みたいにサクサク短時間で遊べて,何回でも気持ちよく楽しめるゲームが,今ちょうど求められだしている」ということを言いましたね。
カナヲ氏:
短い時間でしっかりと楽しめるのは,大事じゃないかと思います。
RPGや育成シム,ローグライトのコアな部分を楽しめるゲームにはしたい。でもドラゴンって,基本的に強い生き物じゃないですか。“娘”ではあってもドラゴンなので,一手ミスったら負けるようなシビアさはイメージと違うし,爽快感もない。
だから育成さえうまくいけば,敵はかなりオーバーキル気味に倒せます。「ドラゴンだから強い」ということに加えて,「あなたの育て方が良かったから勝てるのは当然です」という気持ちよさも重視しました。
「あれもやりたい,これもやりたい」が,すごく好き
4Gamer:
育成の仕組みも,一つひとつがうまくつながっています。
たとえば村人との交流が,好感度だけでなく食材やスキルにも関係する。これはどの段階から考えていたのでしょう。
カナヲ氏:
最初に決めていたのは,育成シムの形にはするけれど,選べるコマンドを増やしすぎないことでした。
初めて遊ぶとき,選択肢が多いと「どれを選べばいいのか分からない」という重さやストレスが生まれます。なので選択肢を限定して,そのなかから今の自分に合うものを選んでもらう形にしました。
4Gamer:
ローグライト的な考え方ですね。
カナヲ氏:
そうですね。
ただ選択肢を絞ると,「食材市場に行く」「スキルの道場に通う」といった個別のコマンドは用意できません。だから村人と交流すると,好感度が上がって,関連する食材やスキルにも影響する。ひとつのコマンドに2つ,3つと役割を持たせていきました。
4Gamer:
複雑なものを作ってから削ったのではなく,シンプルに遊ぶための枠を先に決めていた。
この「限られた日数のなかで何をするか」という仕組みには,ローグライト以外の着想もありますか。
カナヲ氏:
「ペルソナ」シリーズのコミュやコープも参考にしています。
キャラクターと交流すると,仲良くなるだけでなく,お店の商品が安くなったり,仲間が追撃してくれたりと攻略上の利点もあるじゃないですか。
4Gamer:
ああ,しっくりきました。次の攻略までの日数で,どの行動に時間を使うか考える。
カナヲ氏:
初めて遊んだときに,「このシステムずるいな。良すぎるだろう」と思って,いつか絶対に参考にしてやろうと(笑)。
私は「あれもやりたい,これもやりたい」という状態がすごく好きなんです。どちらもやりたいけど,選べる行動はひとつだけ。そのときに「今,すごくゲームをしているな」と感じるんですよね。
4Gamer:
今この人に会っておかないと,次に会えるのは2日後。でも別のイベントも進んでいて……。「俺,いつバッティングセンターに行けばいいんだろう」となるような(笑)。
カナヲ氏:
そうですそうです。あの味がする飴をずっと舐めていたい,じゃないですけど(笑)。
4Gamer:
「DRAPLINE」も,「今回は素早さを伸ばそう」「じゃあ,この食材をくれる人のところへ行こう」と,次にやりたいことが見えてきます。
一方で,複雑なコンボを組めなければ勝てないゲームでもないですよね。シンプルに威力の高い全体攻撃を撃ち続けるのが一番強い。
カナヲ氏:
「DRAPLINE」を作るうえで考えていたのが,RPGや育成シムを普段遊ばない人でもクリアまで遊べることなんです。
慣れている人にとっては,いろいろな仕組みやランダム性を利用して,いかに強く育てるかが醍醐味だと思います。
でも,それでゲームのコツが分からないとクリアもままならないとなると,少し玄人向けすぎる。誰でもある程度は楽しさを味わえるようにしたかったんです。
4Gamer:
シンプルな方法も強いけれど,それだけが最強ではない。そこは遊んでいて,うまくバランスが取れていると感じました。
カナヲ氏:
そのあたりはRPGを遊んでいるときの感覚が大きいですね。
RPGって,シンプルに強い全体攻撃を撃ち続けるのが一番強い,となることがあるじゃないですか。でも「DRAPLINE」でそれをやるのは,あまり面白くない。
RPGなら,そのためにお金を貯めてMP回復アイテムを買い込むところまで含めてゲームになります。でも「DRAPLINE」にはそういう仕組みがないので,MPを使わず強い技を撃てるなら,別の制約が必要だと思いました。
4Gamer:
それをクールタイムにした。これは,どの引き出しから出てきたのでしょう。
カナヲ氏:
「世界樹の迷宮」からの着想もあるかもしれません。すごく強い技を使えるけれど,そのあとにクールタイムがある職業がいて……。
4Gamer:
インペリアルですね。
カナヲ氏:
そう,インペリアルです。ここも拾われるんですね(笑)。
4Gamer:
砲剣,超格好いいんですよ。
カナヲ氏:
ええ,超格好いいんです(笑)。
ロマンがあるから絶対に使いたい。でも私は,クールタイムがあるものって使いにくいなと思うタイプなので,最初は「なんだ,この使いにくさは」と思っていました。
それでも格好いいから使ってみたら,今まで強いと思っていた技の何倍もの威力が出る。そのときに,ときめいたんですよね。
使いにくさがある代わりに,めちゃくちゃ強い技っていいなと。クールタイムの良さに目覚めたのは,あのときだったかもしれません。
「言葉を教える」は残して,「撫でる」はやめた理由
4Gamer:
すごく聞きたかったのが,何を残して,何を削ったのかです。
「DRAPLINE」は1周が1時間ほどなのに,ちゃんと娘に愛着が湧いてくる。たとえば,言葉を教える仕組みは攻略だけを考えれば,なくても成立しますよね。でも,そこは残っている。
カナヲ氏:
あれはかなりピンポイントで入れた仕組みです。
引き出しの話でいうと,私は「どこでもいっしょ」が結構好きで。
4Gamer:
本当にいろいろなゲームが出てきますね。
カナヲ氏:
「どこでもいっしょ」って,仕組みだけをシンプルに言えば,言葉をひとつ入力したらキャラクターがそれをしゃべってくれるだけじゃないですか。
でも,「あ,教えた言葉をしゃべってくれた」という,心がポカポカする感じがある。言葉では説明しにくい効果があって,感情移入してもらううえですごく魅力的な仕組みだと思ったんです。
4Gamer:
「DRAPLINE」は,その使いどころもうまいんですよ。「そこで言ってくれるのか」という場面で,教えた言葉が返ってくる。
ストーリーゲームを作ってきたカナヲさんらしい部分だと思っていたんですが,トロの影響もあったとは。
カナヲ氏:
自分で入力した言葉がここで返ってきたらドラマチックだろうな,というのはかなり考えました。
サッと遊んでもらうゲームですけど,娘を育てる以上は感情移入してもらわないと困るんです。
「この子はこんなにいい子なんです」と物語で説明するのも違うし,長く遊んでいるうちに好きになってもらおうとしても,そこまで遊んでもらえるかは分からない。
だから短いやり取りのなかでも,明確に愛着を持ってもらえるポイントが必要でした。
4Gamer:
ほかにも試した方法はありましたか。
カナヲ氏:
ドラゴン娘の頭を撫でることで好感度が上がるような要素は検討しました。
でも入れてみると,「毎日頭を撫でる」という義務になって,結局ワンクリック増えるだけだなと。これは割とすぐやめました。
4Gamer:
村人を食べられる仕組みについても聞きたいです。
食べたほうが強くなるのであれば,「食べさせたくない」と思う人ほどゲームが難しくなってしまいます。その点は意識していましたか。
カナヲ氏:
そこは完全に認識していました。
大前提として,食べさせる人が強くなること自体は良しとしています。神竜はそういう生き物なので,その役割に沿って遊ぶ以上,ある程度の差は出てもいい。
ただ,食べすぎた人にはデメリットがある。それも必要だと思って入れています。
4Gamer:
「悪いことをするほど強くなる」という部分だけが伝わると,露悪的なゲームに見えてしまう可能性もありますよね。
カナヲ氏:
そうですね。
食べる仕組みは,見せ方を間違えるとただ悪趣味なものやスプラッターものになってしまう。その点は表現も含めてかなり考えました。
そもそも「DRAPLINE」というタイトルも,ドラゴンと,しつけや規律を意味するディシプリン(Discipline)からきています。好き勝手に育てようというより,うまくしつけて,バランスを取っていこうというところから始まっているんです。
バカー担当者:
そこは初期から話していましたね。最初にバカーで紹介動画を作ったとき,食べられるシーンが入っているのをカナヲさんが見て,「そこまで強調しないでください」と言われたのを覚えています。
カナヲ氏:
「そういうこともできちゃうんだ」という自由度としてはあったほうがいい。でも,そこを極めたり,描写を深くしたりするのは違う。
そこが主役ではないので,生々しさやグロテスクな部分は意図的にぼかしています。
4Gamer:
だから,食べさせないという選択もきちんと尊重されている。
カナヲ氏:
ええ。あまり食べさせない人にも報酬があります。
いい子に育てたいから食べさせないのであって,ゲームが下手だからではない。その遊び方にも報酬があっていい。
上に行きすぎたときの天井と,下に行きすぎたときのセーフティネットを用意して,その間を行き来してもらう感覚ですね。
「これがツクール製なの?」。使い慣れた道具を使い倒す
4Gamer:
本作もRPGツクールで制作されていますよね。
周囲でツクールを使ってゲームを作っている人に「DRAPLINE」を見せたら,「これがツクール製なのは嘘でしょう」と言われまして(笑)。
カナヲ氏:
まあ,ツクールが想定しているスタンダードな使い方はしていない気がします(笑)。
でもツクールには,昔からすごい使い方をする人がいるんですよ。「RPGツクールXP」には中身を見られるサンプルゲームがあったんですけど,見ても意味が分からなかったんです。
4Gamer:
「俺の知っているツクールじゃないぞ」と。
カナヲ氏:
そうですそうです(笑)。
それがすごく印象に残っていて,「ツクールってここまで使い倒していいんだ」と感じたんですよね。
4Gamer:
新作を作り始めるときに,別のゲームエンジンへ移ろうとは思わなかったのでしょうか。
カナヲ氏:
考えなかったわけではないですが,一番大きいのはやっぱり慣れです。
どういう手順でゲームを作るのか,その下敷きが最初から頭のなかにあります。新しいツクールでも,初めて触った段階で使い方の4割ぐらいは分かる感覚があるんです。
「使い方が分からないから手が止まる」ということがほとんどない。その便利さは捨てがたいですね。
バカー担当者:
カナヲさんの場合,ツクールだからこそ,このスピードでひとりで作れている部分もありますよね。
4Gamer:
使っている人には当たり前でも,外からは見えにくい利点がありそうです。
カナヲ氏:
ひとつ挙げるなら,RPGの基本的な構造が最初から用意されていることですね。
もちろん,そのまま使うわけではありません。でもそれを土台にして,「自分ならどんな仕組みを足したいか」と考えられる。
元からあるもので5割ぐらいできていて,そこへ自分の作りたいものを加えて近づけていく感覚です。とりあえずプロトタイプを作るところまでは,かなり早いですね。
バカー担当者:
そもそも,ツクールに合うようにゲームを設計していますよね。カナヲさんは,自分自身とツクール,それぞれのできることと苦手なことを分かっていて。
カナヲ氏:
そうですね。「これをツクールでやると,結局一から作ることになるぞ」というものは無理に入れません。いいなと思っても,風呂敷が広がりすぎるものは採用しない。
ゲームとして面白いかだけでなく,自分が広げられる範囲で実現できるかも判断材料なんです。結果として,「ちょうどいいところにしておこう」という自制は働いているかもしれません。
4Gamer:
やりたいことと,使っているツールでできることが結びついている。個人開発ならではの部分でもありますね。
バカーとしても,長い付き合いがあるぶん,そのあたりは安心して任せられるのでしょうか。
バカー担当者:
ええ。そこは信頼しています。
アイデアをいただいたときも,「それ,本当にできるんですか?」というより,「カナヲさんがやると言うなら,面白いものになるんだろうな」と楽しみにしています。
そう言うと,「パブリッシャとして仕事をしているのか」となりますけど(笑)。
炎上してしまったのか……? 予想外だった早期アクセスの反響
4Gamer:
冒頭でも触れたアーリーアクセスの反響ですが,「DRAPLINE」はこれまでとは違うプレイヤーにもかなり届いたと思います。反応の違いは感じましたか。
カナヲ氏:
これまでストーリー中心の作品を楽しんでくれていたファンとは,違う層が入ってきた感覚はありますね。
「DRAPLINE」は早期アクセスを始めた直後から,「この人,もう作者よりうまくないか?」という方が結構いて(笑)。ちょっとビビりました。
野生のスーパーユーザーみたいな方が見え隠れしていました。
4Gamer:
野生のスーパーユーザー(笑)。
4Gamerの読者にも多そうですが,カナヲさん自身を知らなくても,ゲームの仕組みを見て「これは何かありそうだぞ」と入ってきた人はいたと思います。
カナヲ氏:
好きなことを出した結果,そういう人に届いたのであればうれしいですね。
今回は難度や遊びの部分で妥協したくないところもあったので,歯ごたえのあるゲームが好きな人に合わせようとは最初から決めていました。
もちろん,これまでのファンを振り落とそうとは考えていません。でも結果として,遊ぶ人は結構変わるだろうとは思っていました。
4Gamer:
これまでのファンからの反応は,どうでしたか。
カナヲ氏:
正直,よく分かっていないんです(笑)。
周囲の状況が変わりすぎて,とくに最初の1か月ぐらいは反応を追い切れませんでした。「なんだ,炎上してしまったのか?」と思ったぐらいで。そんな大作のつもりで出したわけではなかったですから。
4Gamer:
次の看板作品を作ろう,というスタートでもなかったんですよね。
カナヲ氏:
そうなんです。まず1本,自分の趣味を全部出してみる。それで一度落ち着いてから,もう少し冷静に「売っていくための2本目」を考えよう,ぐらいの二段構えだったんですが……。
4Gamer:
その1本目がめちゃくちゃ受け入れられた。
カナヲ氏:
そうなんですよね(笑)。
4Gamer:
早期アクセス開始時は1200円でした。この価格も,気になった人が入りやすかったと思います。
カナヲ氏:
思いつきで買えちゃう範囲ですよね。セールで20%オフになれば1000円を切る。そういう値段にしたかったんです。
※1200円は早期アクセス開始時の価格。正式版は1680円(税込)。
バカー担当者:
パブリッシャの立場としては,もう少し高い価格も考えられるとは思いました。
ただ今回は,カナヲさん自身にやりたいことをやってもらうプロジェクトなので,その意思を大事にしたかったんです。
こちらが「この価格に見合うものを」と言い始めると,純粋に好きなものを作っている良さまで変わってしまうかもしれないので。
カナヲ氏:
私としても,値段を高くするなら,もっと中身を充実させないといけないし,品質も担保しなければいけない。アーリーアクセスの時点では,考えなくてはいけないことが増えてしまうな,というのもありました。
4Gamer:
その後のアップデートもかなり早かったですよね。いわゆるアセンションにあたる,高難度へ段階的に挑戦する仕組みも初期のうちに入りました。
カナヲ氏:
あれは,かなり緊急の対応でした。
何回も遊べるようにはしているけれど,まだ早期アクセスだし,1周か2周遊んだら,いったん別のゲームに行ってもらうような想定でいたんです。
4Gamer:
でも10時間,20時間と遊んでいる人が普通にいた。
カナヲ氏:
そうなんです。
そうなると,もうやることがなくなってしまう。「このままだと,ユーザーが正式版までに遊び尽くして,どこかへ行ってしまう」と思いました。
物語は正式版で解決させるとして,せめてゲームの部分は出して楽しんでもらおうと。それで最初の半年ほどは,高難度やスキル,アーティファクトなど,戦略に関わる部分を重点的に作りました。
4Gamer:
当初の計画とはかなり変わったんですね。
ユーザーの声を受けて,「これは入れて良かった」と思うものはありますか。
カナヲ氏:
既読スキップですね。
最初からあったほうが快適だとは思っていました。でも作業量を考えると現実的ではなくて,早期アクセスの時点では一度見送ったんです。「そこは許してください」という感じで。
でも想定以上に何度も遊んでもらえているなら,もう避けては通れないなと。意を決して,ひたすらイベントに既読判定を入れる期間を作りました。
結果として,テストプレイもすごく快適になったんですよ(笑)。プレイヤーの皆さんが喜んでくれるのはもちろんですけど,自分のためにもなりました。
4Gamer:
自分の好きなものを作りながら,遊ぶ人のこともかなり見ていますよね。その感覚は,どこで身についたのでしょう。
カナヲ氏:
これはストーリー中心のアドベンチャーゲームを作ってきたからだと思います。
そういう作品は普段ゲームをあまり遊ばない人もプレイするので,ちょっとしたゲーム要素でも,こちらが想定していないところで止まってしまうことがあるんです。
そういう環境でしばらく作っていたので,「これって皆に分かるかな」とまず考える癖がついたのかもしれません。
4Gamer:
先ほどの「ノエル」での筋トレが,ここでも効いている。
カナヲ氏:
そうですね。あの筋肉は今もすごく役に立っています(笑)。
インディーゲームの世界に,もう一度「初めまして」
4Gamer:
ここから少し,カナヲさん自身についても聞かせてください。
長く個人で開発してきたなかで,今のインディーゲームを取り巻く状況はどう見えていますか。
カナヲ氏:
今は個人でもSteamでゲームを出せますし,ゲームを作って仕事にするための手段もいろいろありますよね。
ゲーム開発を始めた当時の自分からすると,すごくうらやましい環境です。当時は,個人でゲームを作って食べていくなら,どこを足場にすればいいんだろうと考えていましたから。
趣味の延長で作っていたものが,バカーさんとの出会いやゲーム連載を経て,少しずつ大きくなっていきました。でも根本は,ひとりでゲームを作って出したい,というところからのスタートでした。
4Gamer:
今回は宣伝やイベント参加もご自身で積極的に行われていますよね。
カナヲ氏:
「DRAPLINE」は遊ぶ人たちが変わると思っていたので,これまでと同じ場所で発信しているだけでは届きにくいだろうと考えていました。
開発の進捗をSNSに載せたり,イベントに出展したり。周りのインディーゲームクリエイターの皆さんがやっていることを見ながら,自分でもやろうと決めたんです。
イベントでほかの開発者と交流して,同じぐらいの進捗でゲームを作っている人たちと話せるのもいいですね。孤独にゲームを作っているなかで,「ひとりじゃないんだ」と思えるのは力になります。
#TIGS2026 、2日目は一般日!
— カナヲ? (@kanawo_tu0) March 21, 2026
DRAPLINEは?-25でお待ちしてます!
試遊した方にはこちらの「ざこのあひる×DRAPLINEステッカー」をプレゼント! https://t.co/iEHx9NH8uN
バカー担当者:
「インディーゲームの世界に一から入っていく気持ちだ」と言っていましたよね。
カナヲ氏:
ええ。完全に「初めまして,お世話になります」という気持ちでした(笑)。
インディーゲームとひとことで言っても,コミュニティやファン層はそれぞれ違うじゃないですか。そこは自分のなかでもはっきり意識していたので,一度ゼロから始めるぐらいのつもりでした。
4Gamer:
ただ,ゲームをひとりで作るだけでも大変なのに,PRまで自分でやるとなると負担は大きいですよね。
バカー担当者:
そこは私たちも認識しています。
個人でやりたいという気持ちは尊重しつつ,「ひとりでやりすぎないでくださいね」とは伝えています。規模が大きくなったら,こちらで引き取れるものは引き取りますから,と。
4Gamer:
メディアの立場でも,現場に出て実際にゲームを見たい。それぞれの視点で面白いところを見つけて伝えることで,そうした負担を少しでも減らせればと思っています。
カナヲ氏:
言わなくても見つけてもらえることは,本当にうれしいですね。
メディアに見つけてもらうには,「村人も食べられる」のようなキャッチーな部分が必要なのかもしれません。でも自分として押し出したかったのは,やっぱりゲームの中身だったので。そこを見てもらえるとうれしいです。
4Gamer:
海外からの反応については,いかがですか。
カナヲ氏:
正直,まだあまり分からないんです。
Steamの掲示板などで反応をもらうことはありますけど,海外の人の声をどう受け取るかは今も課題ですね。
海外向けに複数のSNSを持ったり,コミュニティを作って管理したりするとなると,ひとりではやりきれないのも見えています。
バカー担当者:
早期アクセスの時点では,海外を過度に意識するのはやめようという話もしていました。まずは日本に向けて,カナヲさんが一番いいと思うものを作ることを優先しようと。
正式版では翻訳もブラッシュアップしていますので,本格的な海外展開はここから,という感覚ですね。
「ようやく,最初の企画書を最後まで実装できた」
4Gamer:
正式版についても聞かせてください。
追加シナリオは6万字を超えるそうですが,育成自体はこれまでと同じく,1年間を過ごす形なのでしょうか。
カナヲ氏:
そうですね。基本的には,イベントをこなしながら1年間を過ごす形は変わりません。
正式版では,そこに最初のシナリオをクリアしたあとの世界が描かれます。これまでのプレイを踏まえた物語が展開していく。「DRAPLINE」の解決編,という感じですね。
バカー担当者:
単にシナリオが少し追加される,という分量ではないです。シナリオだけで言えば,もう1本分に近いですね。
4Gamer:
それだけ物語が大きくなると,育成のテンポとの両立も難しそうです。
カナヲ氏:
ええ。なので情報の見せ方は,「DRAPLINE」のゲームの流れに沿って小分けにするなど工夫しています。
4Gamer:
一度に全部語るのではなく,育成を進めながら少しずつ読めるようにする。
周回ごとに娘の名前を変えたり,違う言葉を教えたりしてきた人もいると思います。そういうものが何かにつながるのかも気になるところです。
カナヲ氏:
ここは正直に伝えたほうが安心してプレイしてもらえると思いつつ,作者がどこまで直接言っていいんだろう,という葛藤がありますね(笑)。
すべてとは言い切れませんけど,直近のデータについては,何かいいことがあるかもしれません。
4Gamer:
それだけ分かればうれしいです(笑)。
正式版では25種類のエンディングも収録されますが,これは初期構想からあったのでしょうか。
カナヲ氏:
はい。最初からありました。
もともと「プリンセスメーカー」のような要素は結構強かったですから。
4Gamer:
なるほど。「プリンセスメーカー」と考えれば,育てた娘の結末がたくさんあるのは,むしろ自然なんですね。
カナヲ氏:
そうなんです。そこまで含めて,基本の形だったというか。
4Gamer:
それにしても,25種類すべてを形にしたのはすごいですね。
カナヲ氏:
なので今は,「ようやく最初の企画書を最後まで実装し終わったわ」という感じです(笑)。
風呂敷を広げすぎじゃないかという部分もありますし,「DRAPLINE」がここまで遊んでもらえていなかったら,さすがに無理だったと思います。もしかしたら6種類ぐらいに絞っていたかもしれません。
4Gamer:
早期アクセスで手応えがあったから,最初に考えていたものを最後まで実現できた。
カナヲ氏:
そうですね。
思いついたエンディングは全部,入れる価値があると思えたので。それを実現できたことはうれしいです。
4Gamer:
気づけば,ずいぶん長くお話を聞いてしまいました。
最後に,まずは早期アクセスから正式版を待っていた人へメッセージをお願いします。
カナヲ氏:
ここまで期待してもらえて,注目してもらえたこと自体が,本当に予想外でした。
早期アクセスを始めてからは,「ここまでやるつもりではなかったけど,もうちょっと作り込んだほうがいいな」という,うれしい誤算がたくさんあったんです。
予想していなかったところを増築していくような時間が,すごく楽しかった。
そういう時間をもらえたのは,長い早期アクセスの間,ずっと遊び続けてくれた方がいたからです。忙しかったですけど,うれしい忙しさでもありました。その方々には本当に感謝を伝えたいですね。
4Gamer:
これから初めて遊ぶ人には,いかがでしょう。
カナヲ氏:
「DRAPLINE」は,見た目はある程度キャッチーに作っていますけど,中身は自分の好みを詰め込んだものなんです。ゲームの仕組みも,世界観も,ストーリーも。絵も音楽も自分で作っているので,本当に全部。入り口は何でもかまいません。「ちょっと気になった」と遊んでくれて,最後に「DRAPLINE,面白かった」と言ってもらえたらすごくうれしいです。
ゲーム1本を褒めてもらったというより,自分自身を丸ごと褒めてもらったような気持ちになるんですよね。
だから,「遊んだよ」というひとことをぜひください。とくに初めて遊んでくれた方の感想は,それだけでご飯一杯いけます,ぐらいの感じなので(笑)。
4Gamer:
今までの歩みを知っている人と,「DRAPLINE」で初めてカナヲさんを知った人では,感想もまた違いそうですね。私もかなり遊ばせてもらったので,これから初めて遊ぶ人の反応が楽しみです。
……かなり遊んだといっても,Steamには正式版の発売前なのに120時間,130時間と遊んでレビューを書いている人にはかなわないですけど(笑)。
カナヲ氏:
嘘でしょう,と思いますよね。作者ですら「これ,そんなに遊べるゲームだっけ?」となります(笑)。
4Gamer:
(笑)。本日は長時間,ありがとうございました!
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